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15話 突然の店契約と新しい目標

Author: みみっく
last update Last Updated: 2025-06-26 15:00:57

 多分だけど人気が出れば偽物が出回ってくると思うので、空き瓶を利用して販売されても信用に係るので、使い切ると瓶は消滅して消えるように設定した。魔法が無い世界なので真似は出来ないと思う。それと偽物が作られないように、見た目にも薄い透明なピンク色の液体で、ほのかにピンク色に光るようにしてあるので、これも真似が出来ないと思う。

 しばらくして、俺は受付嬢に近寄り感想を聞こうと声を掛けてみた。

「使ってみました?」

「うん。使った! 使ったよ。なにコレ!? スゴイんだけど! 子供の時の肌に戻って……ぷにぷにして、しっとりしてる! もぅ最高~♪」

 受付嬢は興奮した様子で、自分の頬を触りながらまくしたてた。その肌は、確かに瑞々しく輝いている。だけど、お姉さん……20代前半だよね!? そんな肌を若返らせて……どうするの? 10代の肌は違うか。ぷにぷにだもんな……と、ミリアの頬を見て納得する。

「説明をした通りですけど、持続するのは明日の今頃までですよ。今の技術ですと、これが限界なんですよ」

「そうなの? うわぁ……。で、値段は……?」

 受付嬢は、がっかりしたような声を出し、すぐに恐る恐る価格を尋ねてきた。

「先程のサイズの瓶で銅貨20枚です。大瓶ですと銀貨6枚で33日分で3日分お得ですよ」

「あぁ……大瓶が欲しいけど給与日前で厳しいんだよね。給与日まで小瓶で我慢する~明日も来るんでしょ?」

 受付嬢は期待に満ちた目で俺を見上げた。返事をしないでいると慌てた様子のお姉さん。

「えぇ~なによそれ……。来てよ~ねぇねぇ~お願いっ」

 彼女は俺の服を掴んで揺すってきた。その瞬間、ミリアが頬を膨らませて、怒った表情で近づいてきた。

「ユウヤ様。何をされてるのかしら?」

 ミリアの声には、明らかに不機嫌な色が混じっている。

「えっと……見ての通り商売だけど?」

 俺は困惑して答えた。

「わたしにはイチャイチャしてるようにしか見えないのですが?」

 ミリアの言葉に、俺は思わず顔を赤くした。受付嬢は、少しだけ俺から離れた。

「あ、ごめんね~明日も来てほしくて……つい」

 受付嬢は、少しバツが悪そうに謝った。

「そうでしたの? でしたら……商店街の通りに空き店舗があるので、そちらで商品をご購入をして下さい」

 ミリアは受付嬢に、有無を言わせぬ口調で告げた。

「は、はい。購入しに行きますね~♪」

 受付嬢はすぐにその場を離れて行った。

「え? 俺、店舗の契約してないけど?」

 俺はミリアに尋ねた。

「わたくしが契約をしておきますので、問題ありませんわ」

 ミリアは涼しい顔で言い放った。

「え? なんで?」

「そんなイチャイチャを見せつけられていては、イライラしてきますわ……」

 ミリアは頬を膨らませ、不機嫌そうに答えた。その視線は、俺から受付嬢へと向けられていた。どうやらミリアは、俺の商売が順調に進むことよりも、俺が他の女性と親しくすることの方が気に食わないらしい。俺のスローライフは、やはり前途多難のようだ。

「え? あれ? 俺の目標が無くなったんだけど……」

 俺は思わず呟いた。いや、待てよ。毎月の支払いが発生してくるんだから、その分稼がないとだよな。っていうか、勝手に契約しないで欲しいんだけど……。はぁ……毎月いくらだよ。俺は頭を抱えたくなった。

 ——治癒薬の宣伝と反響

 夕方になって、依頼達成の報告に段々と人が増えてきた。ギルドは活気を取り戻し、人々の話し声と金属が擦れる音が響き渡る。その中には負傷をしている者も混ざっていて、苦しそうに食堂の椅子に腰掛けて休んでいた。

 これは……商売のチャンスじゃないの? 俺はすぐに考えを巡らせた。外傷の治療薬で、効果が弱めの物を出してみよう。

 即効性の痛み止め、止血、傷の治癒促進。完全には治らないので医者からは文句は出ない程度の治癒薬にしておいた。痛みはすぐに引くが、傷は完全に消えるわけではない。

 価格はどうしよう……。医者は傷の程度で治療費が変わるけど……少し高めだけど、銀貨1枚で良いかな? 軽傷じゃ使わないだろうし……。重傷なら、この価格じゃ安いんじゃないか? 苦痛である痛みが消える訳だし。

 試供品を10本用意しておいて、負傷した冒険者に近づいて声を掛けた。

「うわぁ~! 痛そうですね……」

 腕に中傷の傷を負って布で押さえているけど、出血していて布が血で染まっていた。その血の匂いが、微かに鼻を掠める。

「クソッ。しくじってモンスターから攻撃を受けちまってな……」

 冒険者は顔を歪めながら答えた。

「新しく薬の販売を始めたんですけど、無料なのでお試しに使ってみませんか?」

 俺は小瓶を差し出した。

「無料なら試してみたいな……」

 冒険者の目が、僅かに輝いた。

「傷は腕だけですか?」

「傷は腕だけだが……吹っ飛ばされて腰も打って腰も痛めたな」

 冒険者は苦しそうに付け加えた。

「では、これをお飲み下さい。傷の治癒を重視するなら直接傷に掛けた方が効き目が高まって治りが早く治りますけど、飲めば全身の負傷した箇所が直接掛けるよりは遅くはなりますが治りますよ」

「そうか……分かった。腰もツライから飲ませてもらうか」

 冒険者は感謝の言葉とともに薬を飲み干した。その表情には、わずかに期待の色が浮かんでいる。

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